トップを目指す意欲と相応の実績を有し、競技力向上のために新たな技術や手法を導入する活動として、福岡県スポーツ推進基金「令和7年度トップアスリート育成助成金(イノベーション導入助成)」の対象に決定しました。

申請者:久留米大学ラグビーフットボール部
競 技:ラグビー
年 代:大学生

助成対象者

久留米大学ラグビーフットボール部



助成対象活動

AIによるマーカーレス3D動作分析を用いたトレーニング動作および、プレイ動作の分析によるスキル向上

【具体的な内容】
AIモーション分析を用いて、競技に必要なフィットネストレーニングが正しい姿勢、動作で行われているか、また、パス、タックルなどの動作を確認し、効率的、かつ効果的なトレーニングが行われているかを確認する。この確認を行うことで、個人のスキルアップ方法を構築する。また、収集したデータを解析することで、ラグビーフットボール選手の成長度を高めることを目的とする。

【現状分析】
◇導入する背景(課題等):
トレーニングの効果を効率的に発揮させるためには、正しい姿勢によるトレーニングが重要であり、それによってフィットネスの強化や正確なプレイが可能になる。スポーツでは、技術レベルが低いプレイヤーに技術指導する場合、見本を見せながら指導するが、細かな動きになると、実演やプレイ動画だけでは、手本となるプレイの体全体の連動性などが認識しづらく、試行錯誤を繰り返さなければならない。
ラグビーフットボールにおいても、試合の場面を想定したパスやタックルの練習では、細かな動作を見ることが大事になる。これらの練習では、スキルが高い人との動作を見本にして、動作違いを比較することが重要である。従来の練習では、コーチによるコーチングや、動画を見ることで練習を重ねるが、細かな違いを本人が認識することは意外と難しい。そこでモーション・キャプチャーを使うことで、腕の曲げる角度、体全体の一連の動きを可視化し、見本と比較することで、動作を分析し、本人に違いを認識させることで、技術の向上につなげることができると考えられる。

【実証方法・効果】
◇実証方法:
ラグビーフットボールで必要とされるフィットネストレーニング、パス、タックル、フットワークなどの基本スキル、ゲーム中の動きをスマートフォンで撮影し、そのデータを蓄積する。フィットネストレーニングでは、トレーナーに分析してもらう。蓄積された動作をトレーナーが確認、分析することで、正しい姿勢・動作のトレーニングができるようになっているかを確認する。ラグビーフットボールの基本的スキルの動作についても、技術レベルの高い者とそうでない者のモーションをコーチ陣や分析担当者が比較し、検証を行う。また、ゲーム中の動作も撮影し、モーションの確認を行う。モーションは個人に焦点を当てることになるが、全体の連動性との確認のために、別途、俯瞰的に全体の動きとの連動制の確認も必要なため、高所からの撮影をアクションカメラで撮影し、両方の視点から動作向上の評価を行う。これらの確認、検証によって、チーム全体の競技力向上を図る。

◇期待される効果:
モーションセンサーを利用した動作解析によって、プレイヤーが違いを早く認識できる。毎回のトレーニングのモーションを撮影し、どれくらいの期間で改善が図れているかが分かれば、トレーニングの段階やスピードを変えることが可能になる。基本スキルについても同様の効果が期待できる。指導する側も、口頭によるコーチングによって、選手が、指導者の指示を理解しているか、意図した体の使い方ができているかを検証することが可能になり、指導者側のコーチング技術の向上に寄与することが可能になると感がられる。

◇翌年度以降の見通し:
 蓄積したデータは全員で共有する。一定期間内でどれくらい改善されたかを検証し、その結果も全体で共有する。また、プレイヤーへの定期的にアンケートを実施し、本人の認識と実際の数値結果を比較し、結果をレポートとしてまとめる。

【最先端・新規性】
◇国内での導入状況:
AIによるモーション分析は2020年代になって開発されており、比較的新しい技術である。大学のスポーツ科学系、医療系学部、医療機関などでは導入されているが、プロも含めて、ラグビーの事例はほぼ無い。実際にAIモーション・キャプチャーを開発・販売しているあるメーカーに問い合わせたところ、そのメーカーも自社でのラグビーの動画は保有していなかった。そのため、AIモーション・キャプチャーを利用したラグビーの動作分析は少ないと考えられる。

【アイデア】
◇従来の手法や環境との違い:
従来の光学式モーション・キャプチャーは対象者にマーカーを付け、ハイスピードカメラで撮影し分析するため、限られた場所、時間でしか行えず、費用も高額になるため、部活動ではなかなか導入しづらい。しかしながら、今回導入予定の技術は、マーカーを必要とせず、スマートフォンで撮影した動画でモーション分析できるため、場所を選ばずに動作解析が可能となっているため、普段の練習時に利用できる。
また、単に動作撮影した動画を見るだけでは認識が難しかった細かな違いを容易に確認できるようになったと考えられる。また、解析結果もトレーニング中にリアルタイムに把握することが可能となり、モーションを確認しながらのトレーニング、他者のモーションとの比較をすることで、技術力の向上につなげられる。

【汎用性】
 ◇他のチームや競技における利用・応用の可能性
既に他の競技でも取り入れられている技術ではあるため、汎用性は十分にある。今回、導入できれば、ラグビーにおいては、どのような状況で、何が解析可能なのかが分かることになり、そのデータ蓄積は、他チームが同様のことをするときの参考になる。