トップを目指す意欲と相応の実績を有し、競技力向上のために新たな技術や手法を導入する活動として、福岡県スポーツ推進基金「令和6年度トップアスリート育成助成金(イノベーション導入助成)」の対象に決定しました。

申請者:西日本工業大学バドミントン部
競 技:バドミントン
年 代:大学生

助成対象者

西日本工業大学バドミントン部



助成対象活動

「生体信号を利用した競技パフォーマンス向上方法の開発」
各種目のアスリートに対して,各アスリートの生体信号を,ICT機器を利用して抽出し,得られたデータを工学の観点から分析,パフォーマンス向上につながる特徴や各種目の共通点を探しだす。特に球技に対して,脳波および身体の各部位が生み出す加速度等のパラメータからパフォーマンスやモチベーション向上のためのトレーニング方法を構築する。
 これまで種目を横断的にデータ解析し,トレーニングに活かした例はあまりなく,これによりアスリートの成長速度を高めることが狙いである。

【具体的な内容】
 球技を対象に,複数種目のアスリートの生体信号を最新のICT機器,センサを用いて抽出し,球技種目におけるトップアスリートの特徴や共通点を抽出する。
 バドミントンを中心に,ゴルフ,野球等で同様の計測・分析を行う。使用するICT機器は主に2つである。脳波計によって集中力,モチベーションを計測,分析する。ここではセルフモデリング理論に基づくモチベーションVRだけでなく,種目特化型モチベーションVRも用いて計測する。また,上記実験の後に実際に試技をしてもらい,身体の各部位の速度,加速度を計測する。集中力やモチベーションがどのようにフォームやショット,投球動作に影響を与えるか計測, 分析を行う。トップアスリートをはじめ,様々な経験歴,実績のアスリートや非アスリートに同様の計測を行い,上記実験で得られた結果をどのようにアスリートのパフォーマンス向上へつなげるか,その方法を,PDCAを継続しながら開発する。

【現状分析】
◇導入する背景(課題等):
 過去2年間にわたって,本助成ご協力の下,ICTを導入したバドミントンアスリートの強化を行うことができたが,それらは他種目への応用も考えられた。加えて,本学バドミントン部独自の実験により,スイングフォームの客観的な評価方法が見いだされた。そしてそれは他種目との比較が課題として挙げられた。今回の本申請により,より簡単に複数種目での同様の実験を行うことができ,それをパフォーマンス向上へつなげることができると考えられる。これまで,種目を横断して同様の計測・分析を行い,それをパフォーマンス向上につなげた例はほとんどなく,本申請内容の有用性を示すことで,未経験の種目を指導する学校現場においても客観的なエビデンスを示すことができ,指導に活かせると考えられる。

【実証方法・効果】
◇実証方法:
①タブレットやスマートフォンで球技種目のラケットスポーツにおけるオーバーヘッドストロークや野球におけるオーバースロー,さらにゴルフにおけるスイングを行う際の各部位の加速度を測定,比較するとともに,総てに共通している体重移動時の各部位の加速度を測定,比較する。
②アスリートに合ったイメージトレーニングを提供し,その際の集中力を脳波から計測する。イメージトレーニングが与えるパフォーマンス向上の効果を集中力からも検証する。

◇期待される効果:
種目を超えた同様の計測から,共通項を見つけ出し,それに対するアスリートの特徴を示すことで,トップアスリートが専門外の種目への指導ができる可能性が期待される。例:野球のオーバースロー時の体重移動がゴルフのスイングやラケット競技のスイング時の体重移動へ応用が期待される。これは体の使い方という観点から,種目を問わず測定することでパフォーマンスの向上につなげることができる。また,最新のイメージトレーニング方法としてICT機器を用いたイメージトレーニングを提案するが,その効果を脳波からも検証することでよりアスリートに沿ったイメージトレーニングの方法を提供でき,アスリートの成長を加速させることが期待できる。

◇翌年度以降の見通し:
初年度と同様の計測を行いながら,より多くのアスリートのデータを取得する。データを増やすことでAIを用いたアスリート別のトレーニング方法が提供できる可能性もあるため,その方向を検討する。

【最先端・新規性】
◇国内での導入状況:
 今回導入を予定しているアプリケーションは近年登場したものであり,それを導入しているチームはほとんどない。また,イメージトレーニングにICTを用い,さらにその効果を脳波から検証するという手法は,そのような環境を持つスポーツ集団はほぼなく,どこも行っていないものと思われる。

【アイデア】
◇従来の手法や環境との違い:
 従来,スイングを可視化してパフォーマンス向上へ活かすという手法は全国のチームでもごく一部でしか行われておらず,バドミントンにおいては皆無である。また,異なる種目に対して同様の計測を行い,共通部分を見出してパフォーマンス向上へつなげるという手法も,「複数の種目が存在する」「研究できる環境や人材がいる」「ICTを専門とする人材がいる」という総てを満たす環境は日本国内でもないに等しく,少なくとも福岡県ではそのような事例は報告されておらず,本提案は従来の手法や環境と総てが違うといえる。

【汎用性】
 ◇他のチームや競技における利用・応用の可能性
 本提案の特徴が異なる種目における同様の計測であるため,他チームはもとより他競技における応用は十分可能である。