トップを目指す意欲と相応の実績を有し、競技力向上のために新たな技術や手法を導入する活動として、福岡県スポーツ推進基金「令和6年度トップアスリート育成助成金(イノベーション導入助成)」の対象に決定しました。

申請者:福岡県立浮羽究真館高等学校ラグビー部
競 技:ラグビー
年 代:高校生

助成対象者

福岡県立浮羽究真館高等学校ラグビー部



助成対象活動

「DXを活用した栄養事業部の強化」
DXを活用して高校生栄養士を育成する事で選手の競技力向上を目指す

【具体的な内容】
選手の体力面(フィジカル・フィットネス)の向上を目指し、ラグビートップチームに所属する栄養士に監修いただき、ラグビー部員の中から栄養士を育成して選手の競技力向上を目指します。方法として、プロラグビーチームLeRIRO福岡所属の栄養士から支援していただきDX化を図るとともに、現場での技術指導を通して、高校生栄養士が自走できる仕組みを作ります。

【現状分析】
◇導入する背景(課題等):
現在60名の部員を抱えており、近年では福岡県大会ベスト8以上の成績を安定して収めることができているところですが、練習の強度やレギュラー争いの激しさが増す一方で、体づくりがうまくいっていないというのが近年の大きな課題です。体重増加に挑戦するものの成果は出ず、持久力についても例年よりも低い数値のままでした。確かにトレーニングにも要因が考えられましたが、栄養面からのアプローチが特に重要ではないかと感じました。部員の食生活を見てみると、栄養素の偏った食事を摂取していたからです。昨年はスポット的に栄養についてのセミナー等も実施しましたが、継続的な活動にはつながらず、フィジカル向上、フィットネス向上がうまくいかず、チーム強化に大きな打撃を受けました。
これまで栄養についてのアプリの活用や企業、栄養士の方からの栄養指導を受けましたが、いずれも一過性のもので継続的に選手の知識・習慣として定着するまでには至りませんでした。食事や栄養摂取というものは、シーズンや気候、体調など状況に応じて摂取のタイミングや量や内容について異なってくるものだと思います。したがって、選手にとっては年に1回の栄養指導よりも、栄養についての知見を持った専門家が、身近に伴走してくれる環境が必要なのではないかと考えました。そこで、一番身近でありラグビー選手の栄養摂取について豊富な知見を持つ、プロラグビーチームLeRIRO福岡の栄養士に伴走していただくことで、高校生栄養士を育成するとともに、本ラグビー部選手の栄養摂取状況の把握や分析、具体的な改善案や実行計画までを包括的に実行可能だと考えました。

【実証方法・効果】
◇実証方法:
 LeRIRO福岡所属の栄養士に監修していただき、高校生栄養士を育成します。具体的には、部員に栄養の正しい知識を身につけさせるために、定期的に「栄養通信」を発行します。また、高校生栄養士が部員のフィジカル・フィットネス向上のために献立を立てて、高校の調理室で調理をして食事を部員に振る舞う「食事トレーニング(食トレ)」を実施します。このような活動をLeRIRO福岡栄養士と高校生栄養士で連絡を取り合いながら進めていき、LeRIRO福岡栄養士には高校生栄養士の育成に必要な指導を伴走して実施していただきます。そのようにして、高校生栄養士を育成してラグビー部内に栄養事業部を設立する事で、栄養面から選手の競技力向上を目指すとともに、部員のフィジカル・フィットネス向上を目指します。
教育方法:①DXを活用した方法(LeRIRO福岡栄養士と高校生栄養士の情報共有をして対処法をオンラインで教えてもらう等)。②現場での技術指導(調理方法等)③高校生栄養士による報告(栄養通信の共有、献立・調理物の共有等)
実施方法:①栄養指導内容と体重・持久力・筋力等測定のデジタルデータの保存と、栄養士と情報を共有します。②栄養士から食事トレーニングの献立内容、レシピ等を指導していただくとともに、写真等をデジタルデータとして蓄積して次年度以降にも引き継ぐことができる体制を構築します。③選手向けに栄養通信を月に1回発行し、チームで活用しているアプリケーションソフトによって共有を図ります。
分析方法:体重、持久力、筋力等の測定を実施して、栄養指導前後での変化を記録し分析します。このような取り組みによって、最も良い食事のタイミングや内容、摂取量について、一般的に理想とされているラグビー選手の栄養摂取について、授業や年間の大会の多い高校ラグビー部での実践例と成果をまとめ、他校にも汎用できるようなものにしたいと考えています。

◇期待される効果:
高校生栄養士の育成により、常に部員の栄養摂取状態を確認することができ、フィジカル・フィットネス向上を狙うことができます。また、高校生に対し、栄養士としての将来の職業選択を示すことができると考えます。

◇翌年度以降の見通し:
ラグビー部員を募集する際に、栄養事業部の募集も同時に行います。今年度の取り組みを次年度にも継承できるような文化づくりに取り組み、継続して選手を支える高校生栄養士の育成に取り組みます。また、今年度の活動内容(栄養通信・食トレ献立)を報告書にまとめ、財産として蓄積して継承していきます。

【最先端・新規性】
◇国内での導入状況:
 今回のプロジェクトのように、高校部活動に高校生栄養士を育成しようという事例は把握していません。栄養士が年に数回程度スポットで来校して栄養セミナーを実施する例はありますが、DXを活用して伴走しながら部活動の中に栄養事業部を設立しようをいう事例は把握していません。

【アイデア】
◇従来の手法や環境との違い:
 ほぼ毎日活動をしている部活動生の状況を把握するために、高校生栄養士を育成することやその手法として、トップチームの栄養士に伴走していただき、DXを通して報告・連絡・相談を行いながら育成することが従来の手法との違いです。特に、これまではノートなどの紙媒体で記録を保存していましたが、体重、持久力、筋力等を定期的に測定し、データとして保存することで、高校生栄養士とトップチームの栄養士の情報共有が円滑となり的確な分析ができるとともに、毎月・毎年のデータを蓄積することで成果や課題が明確になり、次年度へ向けての取り組みの質がさらに向上できるものと考えます。

【汎用性】
 ◇他のチームや競技における利用・応用の可能性
 高校部活動内に栄養事業部を設立し強化することは可能だと思います。また、その必要性もあります。高校生部員は栄養面の知識に乏しく、競技力向上のために何を、いつ、どのように摂取したら効果的か理解できていない者が多いと感じます。今回のプロジェクトは、そういった高校生部員の知識不足を解消させ、実際に食事を摂ることによって、トップアスリートを目指すためには栄養面の知識と実践力が必要であることを啓発するとともに、高校生栄養士の育成、栄養事業部の強化についてDXを活用して行うものです。本来であれば栄養士がつきっきりで高校生を指導して知識・技能を身につけさせる必要があると思われるのですが、今回のようにDXを活用すれば、高校生栄養士の育成、栄養事業部の設立・強化は成し遂げられると考えています。今回のプロジェクトがある程度の成果を見いだせれば、他校の部活動でも充分応用できると考えています。他校のラグビー部でも活用できるように、体重と持久力と筋力等、測定できる数値と栄養摂取の関係性の分析や、それぞれの数値についてポジションごとの目標数値や実際の取り組み方法について、デジタルデータとして残していきたいと思っています。